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クオリティオブライフ(QOL)

これからの映像表現の可能性に挑戦し続けるニコン

これからの映像表現の可能性に挑戦し続けるニコン

アナログからデジタルへ、そして誰もが手軽に、写真や動画を楽しむ時代へ。スマートフォンとSNSの普及と技術の進歩により、「映像表現」が今、大きく変化しています。
写真およびカメラの黎明期から映像文化を牽引してきたニコンは今、映像表現の可能性と未来をどう考えているのでしょうか。映像事業部長 池上博敬さん・映像事業部 マーケティング戦略部長 川端文子さんに、映像表現のこれまでとこれからの展望について聞きました。

写真撮影の黎明期から、世界の映像文化の発展に貢献

――ニコンのカメラやレンズは、長年多くの人に愛されています。これまでニコンはどのように映像文化の発展に貢献してきたのか、その歴史についてお教えください。

池上:1917年に誕生したニコンは、ドイツの技術者から高度な光学設計や機械加工の技術を学び本格的に写真用レンズの設計を開始、のちに高性能レンズの代名詞となった「ニッコールレンズ」を1932年に生み出しました。そして米「タイム・ライフ」誌の東京支社にいたデビッド・ダグラス・ダンカン氏が「ニッコールレンズ」に惚れ込み、その後、主たる取材では常にこのレンズで撮影をし、世界へと発信されたことから「ニッコールレンズ」およびニコンの名前が世界に知られることとなります。
1959年にはニコン初の一眼レフカメラ「ニコンF」を発売し、以来ニコンのカメラおよびレンズ群「Fマウント」は、60年以上にわたり、高級一眼レフカメラおよびNIKKORレンズシリーズとして進化をしつづけ、報道機関をはじめ多くの写真家にご愛用いただいてきました。
またニコンのカメラおよびレンズは宇宙との関わりも深く、1971年には月面着陸・探査を目的とするアポロ15号に「ニコンフォトミックFTN」が搭載され、その後も近年のデジタル一眼レフカメラまで、NASAに機器を幾度となく納めております。宇宙研究や南極観測などの活動を支援することで、研究の発展に寄与しています。このような極限の環境にも耐えうる製品の技術開発を経て、現在の「Z 9」に代表されるミラーレスカメラでも、『信頼性が高い』『プロや写真家からの信頼が厚い』『グリップを握った時の感触が良い』などの評価に繋がっています。

川端:文化の面では、世界中の写真愛好家が、プロフェッショナルとアマチュアの枠を超えて交流できる場を提供し、映像文化の発展に貢献することを目的に、「ニコンフォトコンテスト」(世界最大規模の国際写真/動画コンテスト)を1969年から開催。撮影機材を問わず第三者の審査員により秀作を選び発表するなど、映像文化へ貢献し、今年も過去最高の応募を頂いています。

SNSの普及による映像文化の変化とニコンの挑戦

――スマートフォンやSNSが普及したいま、映像表現はどう変化しているのでしょうか。

池上:特にYouTubeやTikTok、InstagramなどSNSの普及により、動画への関心が高まっており、若年層を中心に、より高い映像クオリティを求めてレンズ交換式カメラを求める人が増加しています。レンズ交換式カメラは、センサーが大きく、レンズの選択肢が多いため、よりエモーショナルで印象的な動画撮影が可能になり、作品性が高まります。
3Dや4Dに対応したコンテンツやメタバース空間での表現など、映像表現の可能性は今後さらに広がっていくでしょう。

川端:個人の発信だけではなく、NetflixやAmazon Prime Videoといった動画ストリーミングのプラットフォームが拡大し、プロのクリエイターによるコンテンツ撮影の機会が急増しています。中でも、個人で所有している機材を使い、ワンマンオペレーションで動画を撮るスタイルも増えています。動画の世界において新しい文化が創られつつありますから、我々はその機会をしっかり捉えていきたいと考えています。

――どんな製品が支持されているのでしょうか?

池上:創作意欲が高い若年コンテンツクリエイターやワンマンオペレーションの映像制作者にはフルサイズミラーレスカメラの「Z 9」や「Z 6Ⅱ」などが支持されています。放送局での使用やミュージックビデオなどのコンテンツ制作に使われた実績も徐々に出てきており、手応えを感じています。
また、今後の更なる製品強化に向けて人材も募集しています。

フルサイズミラーレスカメラ「ニコン Z 9」

川端:上述の「ニコンフォトコンテスト」の動画部門ではスーパーショートフィルムカテゴリーを新設しているほか、国内では縦型動画に特化したコンテスト「Vertical Movie Award」、欧州では「Nikon Film Festival」を開催しており、動画作品を投稿していただける機会をグローバルで新たに提供しています。さらにSNS世代に興味を持ってもらえるよう、Instagramのリール動画作成講座なども行い、人気を集めています。

――マーケティング上の変化はありますでしょうか?

川端:ここにきてフイルムカメラに関心を持つ若者も出て来ています。撮影のプロセスを楽しんだり、1980年代のデザインが逆に新しく感じられているようです。
「Z fc」に関しては、FM2にインスパイアされた特徴的なデザインと操作性をもたせて、製品のスペックだけではない、ライフスタイルや趣味を切り口にした訴求をしています。カメラのある生活をイメージできるようにすることで若年層がレンズ交換式カメラを手に取りやすいようにしています。

APS-Cフォーマットミラーレスカメラ「ニコン Z fc」

また、オンライン・オフライン双方の接点を作るよう努力しています。SNSなどのオンラインだけでなく、オフラインで実際に機材に触れていただき、その性能、楽しさを体験していただくことも大切だと考えているためです。例えば、若年インフルエンサーやクリエイターを集めたオフラインイベントを世界中で展開しており、気軽にカメラに触っていただき、その性能を実感し、その感動を発信していただけるように工夫しています。

――「映像表現の可能性を広げる」ために、どのような取り組みをしていますか?

池上:製品を使ったサービスも拡充しており、お客様にコンテンツを提供する事業をスタートしています。例えば、2022年4月から株式会社ニコンクリエイツという子会社が始動しており、最新映像技術による撮影が可能となる複合型撮影施設の稼働を開始しました。そこでは360度で被写体を撮影し、3D映像として視点を変えることが可能なボリュメトリックビデオを撮影・制作できるほか、最近話題になっている、セットの背景に映像やCGを表示したLEDのスクリーンを使うバーチャルプロダクションを用いた撮影も可能です。

このように先進テクノロジーを使った新しい映像文化への貢献にも力を入れています。

バーチャルプロダクションについて

多様な働き方の尊重とグローバルワンチーム

――マーケティング戦略を企画し、実行しているマーケティング戦略部のメンバーは、女性も多く、多様な働き方をしているそうですね。

川端:はい。マーケティング戦略部のメンバーは比較的若く、平均年齢も30代で女性が多い部署です。また、人事、財務、海外勤務経験者、他事業部出身者、キャリア入社者などバックグラウンドが異なる人材が集まっていることが強みとなり、新たなアイデアにつながっています。

池上:マーケティング戦略部は少人数のチームながら、よくやってくれています。グローバルのマーケティングを束ねることは、並大抵なパワーではできません。海外各地のマーケティング担当者と頻繁に英語によるグローバルミーティングを行っていますから、文化や言語の壁もあります。そういった壁を乗り越え、グローバル視点で「ニコンファンになっていただくにはどうすればよいか」を念頭にディスカッションし、施策に落とし込んでくれています。

川端:本社のマーケティングはグローバル視点で考えています。本社の方針、指針に対して共通理解を持ってもらいながらも、地域特性を加味した独自性も尊重し、グローバルワンチームで動いています。
各国の成功例や課題を共有しながら、他の地域で同様のことができるのか、何が課題解決のキーとなるのかを一緒に考え、本社として各地のローカルメンバーと伴走することを大事にしてきました。このような活動の成果が、少しずつ出てきています。

――最後に、映像事業の展望について教えてください。

川端:ニコンはありがたいことに、長年にわたり熱狂的なファンに支えられてきたブランドです。既存のファンを大切にし、また、若年層をはじめとした新しいファンまで、すべての世代で愛されるブランドにしていきたいと思っています。
若年層からコアなファンまで、それぞれのニーズにきちんと寄り添うマーケティングを行い、ファンの声に耳を傾けながら一緒にブランドを作りあげていくような取り組みができればいいなと思います。

池上:過去も、いまも、これからもお客様の期待を超える感動体験を提供し続けたいと思います。これからのニコンにご期待ください。

※所属、仕事内容は取材当時のものです。